ハマチ ケンタロウ
濱地 賢太郎
HAMACHI Kentaro
所属 理工学部 ロボティクス学科
職名 講師
言語種別 日本語
研究概要 微分幾何学的手法を用いた量子力学の定式化,および非可換幾何学の研究

「量子力学」は「古典力学」が通用しない「ミクロ世界」の数学的記述を行うもので,現在標準的な量子力学の数学的構造(CCR・CAR)と解釈は,これまでのところ大きな破綻を起こすことなく成功していると考えられています.しかし近年においてはミクロスケールにおいてもより詳細・複雑な実験が行われるようになった結果,「ミクロとマクロの境界があいまいな世界」が存在していることが次第に明らかになってきたようです.それは,「量子力学は古典力学と異なるものである」として,数学的にもまったく異なる手法-ヒルベルト空間上の作用素-を用いて議論することへの疑いや限界を呼び起こすものであると思います.このような動機のもと,量子力学をより古典力学と親和性の高い数学的記述する方法を研究し,またこのような量子・古典のあいまいな世界の構造を暴き出したいというのが,大雑把な目標です.
このような「古典・量子対応」の研究は,これまで主に古典系を量子化する手法の探索という形でなされてきましたが,それらのほとんどは結局ヒルベルト空間上の作用素を用いて矛盾なく量子力学の代数系を得るための方法論に留まっているように思われます.そこで発想を逆転して,古典系で量子系を記述して,そのとき量子系から古典系がどのように解釈できるのかという戦略をとります.
主として用いるのは,70年代中盤ごろから開発されてきた古典ハミルトン系の変形量子化(deformation quantization)で,この理論では任意のシンプレクティック多様体上で正準量子化(に相当する代数の構成)が可能になります.ですが,「量子力学の記述」という意味ではまだ完成された理論ではありません.特に致命的な問題として,state (量子状態)の記述ができないことがあげられています(標準的な量子力学において,stateはヒルベルト空間のベクトルとしていつの間にか導入され,それが古典論的に何に対応しているのかはっきりさせないまま使われています.SchrödingerやBohm等が取り組んではいましたが,成功したとは言えないようです).
変形量子化によって与えられる非可換環は各要素の表示として多様体上の可換関数環を用いるので,一般には有限生成でない無限次元の環ですが,位相環にはなりません.このことがstateの定義に対して大きな障害になっています.これは無限次元であっても関数解析学の手法によって意味のあるstateを簡単に定義できるC*環やvon Neuman環のような位相環とは大きく異なる点です.変形量子化は,代数構造のみから適当なstateの定義が一般に困難であることを明らかにしました.そこで私は量子系の数学構造の記述においてstateの適当な定式化を研究テーマとしています.