オオタ ソウイチロウ
大田 壮一郎
OTA Soichiro
所属 文学部 日本史研究学域
職名 教授
言語種別 日本語
研究概要 室町幕府の宗教政策に関する研究

 日本中世における幕府と宗教の関係は、禅思想の受容や禅文化の影響という視点から研究されてきた。そこには、武士個人の信仰と幕府の宗教政策が区別されていないという問題がある。それを解決するために、私は室町幕府の宗教政策を研究してきた。たとえば、将軍の身体を護る僧侶(武家護持僧)について以下のように指摘した。
① 10世紀頃、天皇の身体を仏教の力で護るため、天台宗や真言宗の3人の密教僧が24時間交替で祈祷をするようになった。この僧侶達を護持僧という。これに対し、14-15世紀の室町幕府には、将軍の身体を護る武家護持僧が存在した。そのメンバーは、当時盛んであった禅僧ではなく、天皇の護持僧と同じ天台宗や真言宗の密教僧であった。
② 武家護持僧は、将軍個人の身体を護る祈祷だけではなく、災害や異常気象を鎮めるための祈祷も担当した。また武士の政権にふさわしく、戦争の際に勝利のための祈祷や敵を呪うための祈祷を行った。こうした活動は禅僧ではできないので、密教僧が担当したのである。真言宗の醍醐寺(三宝院)がその中心として活躍した。
③ 天皇や公家の力が弱くなった14-15世紀では、天皇より将軍に仕えた方が寺院の保護や領地の確保に有利なので、僧侶達は競って武家護持僧になろうとした。また、積極的に将軍の子供を寺院の住職に迎えた。その結果、中世前期まで時に政治権力に反抗的であった天台宗や真言宗は、禅宗と同じように室町幕府に従属するようになった。
 このように、室町幕府は禅宗だけでなく他宗派も含め保護や利用をしていた。日本中世における宗教の役割を解明するためには、幕府と諸宗派の関係を全体的に捉える必要がある。