KAWABATA Miki
Department / Course Kinugasa Research Organization
Title / Position Associate Professor
言語種別 日本語
タイトル 日本の公衆浴場と海外のPublic Bath Movement――国民性の創出と国民道徳論
メッセージ 日本人は古くから入浴を好む清潔な民族・国民であるということがよく言われます。このような考え方はいつ、どのように生まれ広まったのでしょうか。江戸期、身体と精神の安定を図り、病から身を守ることを説いた養生書が一般的によく読まれました。養生書のなかで重視されたのは体内の「気」の流れであり、入浴を頻繁にすることや熱い湯につかることは「気」を消耗させるものと見なされていました。明治期の初めも、医師や衛生行政を担当する官僚などの言説では、しばらく「気」の流れが重視されていましたが、1897(明治30)年頃から、大きく変化していきます。
1897年に、入浴が良い習慣であり日本には古くから入浴習慣がある、比べてヨーロッパでは日常的に入浴することが稀であるということが、医師や衛生の専門家たちが刊行していた『大日本私立衛生会雑誌』の中で紹介されました。その中で、ヨーロッパでは公衆衛生の発達とともに浴場が設置されているということもあわせて紹介されています。このような記事は、その後も『大日本私立衛生会雑誌』に掲載されました。これらの記事により、ヨーロッパから入浴は衛生上必要であるという認識がもたらされ、入浴習慣を古くから持っている「日本人」は「清潔好き」であるという言説が現れるようになったのです。
 このように、一見、日本独自と思われる認識も、海外との比較で生まれてきたことが分かります。私たちの生活の根底にある自覚しにくい規範を考えることが、過去だけではなく、未来についても考えることにつながっていると思い、日々、研究を進めています。