タニウラ ヒデオ
谷浦 秀夫
TANIURA Hideo
所属 薬学部 薬学科
職名 教授
言語種別 日本語
研究概要 神経発達障害Prader-Willi症候群の原因遺伝子であるNecdinとその関連遺伝子の機能解析

Necdinは、ニューロンの発生直後(マウス発生10日目前後)より脳、とくに視床下部において発現誘導される約45kDaの細胞内蛋白質で、ヒトNecdin遺伝子はPrader-Willi症候群欠損領域である染色体15q11-12に存在し、同症候群の原因遺伝子と考えられている。Prader-Willi症候群の主な症状としては、視床下部ホルモン分泌障害による低身長、性器発達障害、筋緊張低下、呼吸障害、軽度知能障害、末梢感覚障害、肥満などが挙げられる。Necdin遺伝子欠損マウスでも同様の症状が認められ、視床下部ホルモン産生細胞の減少、呼吸障害による生後間もない致死、後根神経節ニューロンの減少、脳内ニューロン突起伸展異常、大脳皮質GABA介在性ニューロンの発生異常、高脂肪食での肥満などが報告されている。呼吸障害においても呼吸中枢ニューロンの異常によることが報告されている。Necdinは、神経細胞の細胞死制御や細胞分化に関与していることが示唆される。また、神経細胞のみならず、筋細胞や脂肪細胞分化にも関与することが報告されている。Necdinは、MAGEファミリーに属しており、これまでに30種類以上報告されているが、その中でもTypeIIと呼ばれる分化細胞に発現している蛋白質群ではその機能の重複があることが示唆されている。これらMAGEファミリーでは共通して200アミノ酸程度からなるMAGE Homology domainが存在し、お互いに約50%の相同性が認められている。MAGE遺伝子は、植物から高等生物まで幅広い種で保存されているが、下等生物では1種類のみである。近年、酵母においてSmc5-Smc6複合体中のNse3が単一のMAGE遺伝子であることが明らかとなった。Smc5-Smc6複合体は、DNA修復に関与していることが報告されているがいまだその機能は不明である。Smc5-Smc6複合体中では、Nse1、Nse3、Nse4がサブ複合体を形成している。Nse4は、EIDファミリーに属し、転写活性を抑制することで細胞分化に関与していることが報告されている。また、Nse1にはUbiquitin ligaseに似たRING finger構造が存在するが機能はわかっていない。このようなことから、Nse1、Nse3、Nse4およびそれらの結合蛋白質の機能解析、細胞性粘菌などの単純生物系を利用した基本的機能解析などを通じて、細胞の分化成熟機構を解明していく研究を行っていく。またこれらの機能解析を通じてPrader-Willi症候群の発症機構の解明につなげていきたい。