ノムラ ヤストシ
野村 泰稔
NOMURA Yasutoshi
所属 理工学部 環境都市工学科
職名 教授
言語種別 日本語
研究概要 カオス信号入力に基づく構造物のBaseline-Free損傷診断法の開発およびソフトコンピューティングによる構造ヘルスモニタリング

本研究はこれまでに,カオス信号入力に基づく構造物の損傷診断法を開発し,損傷前後での振動応答のカオス特徴量を比較することで,数%の部材剛性が低下する複数の層を特定することに成功した.そこでは,診断対象の一次固有振動数より低い帯域のカオス信号を入力することで,構造物の応答が入力信号の波形構造を保存し,損傷を有する層の応答のカオス特徴量の変化が,固有振動数・モード形状などの変化よりも大きいことを明らかにした.ただし,この方法は,損傷前後で構造応答のカオス特徴量の相対評価を行うため,過去に損傷前の基準となる応答データ(Baselineデータ)を計測しておく必要があり,実用化の観点から効率的とは言い難い.また,今後の高齢化が進む社会基盤施設の増大化を勘案するとBaselineデータを必要とせず,損傷箇所を迅速に特定する技術の開発は非常に重要である.そこで本研究では,社会基盤施設の損傷診断を高効率かつ高精度に行える技術の開発を目的として,カオス信号入力に基づく損傷前の基準データを必要としないBaseline-Free損傷診断法の開発を目指す.
また,本研究の関連研究の一つとして,ニューラルネットワークやSupport Vector Machineなどのパターン認識手法を用いて,コンクリート床版のひび割れ形状に基づく損傷度診断システムの構築に取り組んでいる.橋梁のコンクリート床版を対象とした目視点検では,コンクリートの表面に顕在化したひび割れなどの損傷要因に関する視覚的な情報から,専門家が床版内部の健全性を評価する.この表面的な視覚情報からコンクリート内部の劣化状況を結びつけているのは,専門家の長年の経験により裏付けられた知識である.しかし,今後想定される経験豊富な専門技術者不足の問題を勘案すると,補修の必要性に応じたコンクリート構造物の表面的な健全性を的確に評価し,さらに詳細な調査を必要とする対象物の特定を実現する評価システムの構築は極めて重要であると考えられる.そこで本研究では経験豊富な専門家が実際に目視点検に基づき健全性を評価した事例をもとに,パターン認識手法を用いて,その評価に内在する直感的かつ経験的な知識を学習し,構造物の健全性評価を支援するシステムの構築を試みる.