モリナガ タカコ
森永 貴子
MORINAGA Takako
所属 文学部 国際文化学域
職名 教授
言語種別 日本語
研究概要 1. 18~19世紀の帝政ロシアを中心とするユーラシア貿易
2. 欧米諸国のアジア貿易とロシア・アメリカ会社、および近世日本を取り巻く北太平洋の国際情勢

1. ピョートル改革により成立した帝政ロシアは度重なる戦争を通じてバルト海沿岸、黒海沿岸、シベリアへと領土を拡大したが、シベリアと北東アジアへの進出に関しては政治的結果ではなく、民間商人、狩猟業者の自発的活動という側面が強い。ロシア人が人口希薄なこの地を支配した初期の要因は毛皮資源の獲得であり、その後のロシア・アメリカ会社の設立、アラスカのロシア領編入は民間毛皮会社の尽力によるところが大きかった。しかし露清間の自由取引であるキャフタ貿易成立後、その主要品目は毛皮から茶へと変化した。主要取引商品がロシアの輸出品である毛皮から清の輸出品である茶に変わったことは、ロシア側商人の取引構成、ヨーロッパ・ロシア商人とシベリア商人の勢力図に大きな影響を与えた。さらに茶貿易の繁栄はロシアの新たな輸出品目である綿織物の育成を促進し、ヨーロッパ・ロシアの貿易業者が多く工場主へ転換した。研究者は主にこの時期のユーラシア貿易(特にロシア、清朝中国)における商品流通の変化を通し、その担い手であった商人の家系、社会、情報、文化について研究する。
2. 欧米諸国は18世紀から清の広東港において商館(ファクトリー)貿易を積極的に行い、中でもイギリス、スウェーデン、デンマーク、アメリカ合衆国などの国々は茶を主要取引品目とするアジア貿易を行った。一方ロシアはロシア領アメリカを拠点に、ロシア・アメリカ会社を通じてアジア貿易への参入を計画したが、キャフタ貿易の存在を理由に清朝から広東貿易を拒絶された。この結果、ロシア側はイギリス、アメリカの船舶に商品を委託販売する形で広東貿易に参入しようとした。こうした動きは北米沿岸におけるロシア、イギリス、アメリカ合衆国の領土分割競争と並行して行われ、各国は北太平洋の外交的利益だけではなく、経済的権益を巡って争った。研究者はロシア・アメリカ会社の成立から解散に至る時期を対象に北太平洋におけるアジア貿易がどのように展開したのか、それらが後の帝国主義時代へとどのように結び付いていったのか、その過程を主な研究対象とする。さらにこうした研究を通じ、近世から幕末にかけて日本が開国に至る時期の北太平洋周辺の国際情勢についても、貿易の視点から分析していく計画である。