イノウエ ミツユキ
井上 充幸
INOUE Mitsuyuki
所属 文学部 東アジア研究学域
職名 教授
言語種別 日本語
研究概要 「中国近世における文化史・社会史の研究」および「中国西北内陸部の乾燥/半乾燥地域における人と環境の相互作用に関する研究」

私の研究テーマは、大きく二つに分けることが出来る。
まず一つ目は、中国近世、とりわけ16~17世紀にかけての「明末清初期」と呼ばれる時代の特質を、文化的・社会的な側面から明らかにすることである。私は、日記や随筆などの史料をもとに、明末清初期における文人の日常生活の諸相を探求している。とりわけ主要な研究テーマとして採り上げているのは、経済・文化の先進地帯であった江南の諸都市において、明末清初期に大流行した書画骨董の蒐集と鑑賞、およびその取引についての実態解明である。明末清初期は、近世中国史上における一代転換期であった。この時代に形成された数々の文化的所産から、政治や社会や経済の仕組み、さらには人々の行動や思考のパターンに至るまで、実はその多くが現在にまで引き継がれ、文化の基層部分を強固に形成・規定している。我々日本人一般が抱く古典中国に対するイメージの多くも、実はこの時期の影響を強く被っているのである。この時代の文化について正しく理解することは、現在の中国のことをより深く知る上で、極めて重要な意義を有するのである。
そしてもう一つは、現在大きな注目を集めている中国の環境問題、とりわけ内陸部の砂漠化と水不足について、その歴史的プロセスを解明することである。私は、中国西北の黒河流域を対象地域として、調査研究に取り組んでいる。黒河は、青海省の祁連山脈に源を発し、甘粛省の河西回廊の張掖・酒泉オアシスを潤した後、内モンゴル自治区のエチナオアシスで末端湖を形成する、中国第二の内陸河川である。過去から現在に至るまで、「文明の十字路」である黒河流域には、生活形態(農耕・遊牧)、信仰(チベット仏教・イスラム教)、民族(漢族・チベット族・モンゴル族)を異にする様々な人々が往来・居住し、相互に対立・融合を繰り返しつつ共存してきた。ここは常に、中国社会が抱える問題点・矛盾点が、最も端的に現れる地域なのである。私は、文献資料の解読と現地調査に基づき、共同研究に携わった他分野(文化人類学・人文地理学・雪氷学・水文学・地質学など)の研究者による協力の下、歴史学の立場から、黒河流域における人と自然との関わりについて、とりわけ水資源の開発と利用を中心的なテーマに据えて研究を行っている。