AZUMA Yoshifumi
Department / Course College of Policy Science Department of Policy Science
Title / Position Professor
言語種別 日本語
研究概要 開発によって周縁化される普通の人々の運命を統計と参与観察、ナラティブを用いて考究する

これまでの研究では、インドネシア・カンボジア・東チモールでの約20年にわたる開発援助実務と調査研究の経験を生かし、開発援助や多国籍企業の海外進出(グローバル化)が途上国の社会に生きる人々の暮らしを大なり小なり周縁化していくプロセスをWallersteinのモダンワールドシステムを用いて分析して来た。現在は今年度からのカンボジア、プノンペン大学招聘教授としての在外研究の機会を生かして、1)平和が定着したあとで、生活の糧として森林資源の不法収奪が行われているのか、2)2018年7月に実施された総選挙の正統性を現地調査から検証している。
平和構築分野ではカンボジアで継続している除隊兵士調査および、アチェ州の除隊ゲリラ兵の実態を平和の定着と森林破壊との因果関係として調査している。アチェ州とカンボジア(バッタンボン州)では内戦時には森林資源は地雷や山間地でのゲリラ戦闘などによって「保護」されてきたが、和平が進められるにつれ、兵士達は糊口をしのぐ為に森林や山肌からの岩石を切り出す事を始めた。 特にアチェ州の森林は内戦時にスマトラ島で最も保護されていた森林であったが、和平後は津波による復興バブルによって膨大な木材と岩石、砂利が必要となり兵士達は通常の職業訓練などは受けずに「入札」に応札して手数料を稼ぐ事に腐心していた。2009年9月にはアチェ復興庁は解散してバブルは終わりその後の生活の糧は森林からの無秩序な収奪であった。これまでのカンボジア除隊兵士調査および、アチェ州除隊ゲリラ兵の実態調査を踏まえて、和平と森林破壊との因果関係について実施する予定である。和平が環境破壊に繋がるアイロニーをアチェの国立シャクアラ大学理工学部との共同研究としてGIS(地理情報システム)を用いた経年経過観察と現地で得た直接インタビューによる質的データ、及び統計から得た量的データによって複合的に検証したい。
東南アジアにおける「法の支配」も興味あるテーマである。過去のインドネシアでは土地強制接取問題など「法の支配」の不在が常態であり、恒常的に暴力の行使による人権抑圧が行われてきた。同様な現象は「開発独裁下」の現代カンボジアでも見られる。現在現地調査中のカンボジア民主化支援では選挙人名簿作成段階から反政府有権者は選挙人登録されないケースも多く、人口統計上の有権者数よりも選挙人の方が多いという逆転現象も見られる。この意味で、法の支配の基本のひとつである直接民主選挙制度は機能していない。途上国への選挙支援という新しい援助形態を政治学からではなく、技術援助の見地から検証する試みも、実際に統計データを用いて住民登録に関わった東チモール、カンボジア、インドネシアやアフガニスタンを例にして検証している。更に低開発国への選挙支援という新しい形態の援助を政治学からではなく、テクニカルな技術援助として開発学の見地から検証する試みも始めている。