TAKAHASHI FUMIO
Department / Course College of Life Sciences Department of Biotechnology
Title / Position Lecturer
言語種別 日本語
研究概要 黄色植物における光形態形成と光運動反応の解析

光は地球環境・生命を考える上で切り離せない環境条件の一つである。特に植物において、光は光合成を行い養分補給するだけでなく、多くの形態形成の信号として重要な役割を担っている。その光の中で、青色光は、概日リズム、屈性や葉緑体定位運動などをおこし、植物が生きぬくために不可欠な波長である。昨今、様々な植物で青色光受容体が単離され、その機能が理解されるようになってきた。しかし、進化的に興味深い黄色植物だけ、その光受容体がまだ見つかっていない。(黄色植物:海水域の一次生産者の95%を占有していると考えられる分類群で、生態系や食物連鎖に非常に重要である)。光環境と成長・環境要因の因果関係を証明する上で、この群の光受容体の探索は不可欠である。
近年、私は、先端成長を行う管状の多核黄緑藻(黄色植物)フシナシミドロ(Vaucheria)を用い、青色光によって誘導される葉緑体光定位運動・分枝に伴う細胞内の動態を、細胞学的見地から解析した。また、分子生物学的手法を用い、青色光受容体の単離・機能解析を行ってきた。
その結果、①非成長域に青色光を部分照射すると、葉緑体は照射域に向かって移動を開始し、光照射後30-40分で一段落し、約1時間後には葉緑体の定位した場所で光が透過しやすくなり色が薄くなった。驚くべきことに、それまで細胞膜直下で2-3層に平行にならんでいた葉緑体が90度回転して、細胞膜に垂直な配向に変換した。入射光から、より遠い葉緑体の光合成効率を上げていると考えられた。一方、核は、葉緑体と同時に照射域へ移動し始め、数時間後にはその数は非照射域の2-3倍に達し、元の成長域と同様の密度になった。フシナシミドロの分枝の発生は、青色光による葉緑体と核の密度が重要であることがわかった。
②次にこの光反応の光受容体の探索を行った。緑色植物が持つ青色光受容体のLOV domainが黄緑藻フシナシミドロにも存在していることを確かめた。しかし、緑色植物で知られているような青色光受容体は存在せず、N末端に転写因子(bZIP)をコ-ドする配列をもつ未知の光受容体であった。dsRNAを用いたサイレンシング反応によって、機能を解析すると分枝の誘導が抑えられた。そこで私はこの青色光受容体をAureochromeと名づけた。
以上のことから、フシナシミドロの分枝形成の過程には、葉緑体のダイナミックな運動と核の集積が必要であり、さらに新規青色光受容体Aureochromeを介していることが明らかになった。またこの光受容体は黄色植物に限定の光受容体であることもわかった。
  水環境の大部分を優先する黄色植物でみつかった新規光受容体は、環境問題や水域の生物増殖などの諸問題を解決する上で重要な知見になったと考えられる。