アメカワ ユウイチロウ
雨河 祐一郎
AMEKAWA Yuichiro
所属 国際関係学部 国際関係学科
職名 准教授
言語種別 日本語
研究概要 有機機農業や複合農業、アグロフォレストリー、適正農業規範GAPなどを総称するいわゆる持続的農業が、小規模農家の農業経営・生業・環境保全に果たす役割について、東南アジア(特にタイ)を中心に研究してきた。今後は、東南アジア農村部における水資源利用に関する諸問題についても、政策遂行者と市井の人々の見方を交差させながら、研究を行っていきたいと考えている。

今後は以下二つの研究に取り組んでいきたい。第一の研究は、東南アジア公営GAP、とくにタイのQ-GAPに関する研究である。これについて、適正農業規範GAP(good agricultural practices)をはじめとする農業食料安全性基準が発展途上国におけるその運用において及ぼす影響に関する研究のうち、主なものは、経済分析である。他方、それらの基準が、安全性や品質の保障という本来の役割や機能に対して果たす能力や有効性に即した研究は、比較的少ない。これら両研究が対象とする事象は、その内実において無関係ではなく、非常に密接に関連している。すなわち、経済分析において、認証水準の高い国際的な農業食料安全性基準の行使により、社会経済的に周辺的な途上国生産者が輸出向けバリューチェーンから排除されるとされる現象と、途上国政府が国内で設定する安全性基準が低すぎるため、多くの周辺的な生産者がその認証を受けて市場参加している状況は、表裏一体の論理連関にあるということである。本研究の核心をなす問いは、海外市場と国内市場の間にある異なる市場性から派生する国際基準と国内基準の間のこうした「ねじれ」は、国内基準の漸次的底上げによるのではなく、同一基準内における認証水準の複数化という方策によって解消できるのではないか、である。
本研究の方法論については、Q-GAPと、我が国または西欧の生産工程管理基準(多くの場合GlobalGAPに準拠)を満たした農家及び非認証農家の事例との比較を通じて行う。具体的には、アスパラガスとキャベツのバリューチェーンに関し、(1)Q-GAP認証の生産工程管理における生産農家のコンプライアンスの実態を、残留農薬検査の結果と様々に比較照合することを通じて解明する、(2)市場の諸アクターがQ-GAPに対して示す流通上の有効性の認識を実証的に解明する、(3)前(1)(2)の知見をもとに、バリューチェーン全体における相互連関を明らかにする。我が国または西欧の生産工程管理基準と現行Q-GAP基準の間に最適なGAP認証水準が潜在することが論証できる場合、本研究の成果は単一GAP基準における認証水準の段階的な分化ないしは複数化の必要性を提議することに資すると確信する。

第二の研究は、タイにおける水資源開発に関する。2016年10月に亡くなったタイ前国王ラーマ9世(プーミポン・アドゥンヤデート)は、生前、貧困に苦しむタイ農村民の生活改善のため、多岐にわたる開発事業を立案・推進し、「開発の王」として国民から絶大な人気と崇敬を集めた。しかし、その強い政治的影響力の裏返しとして、ラーマ9世を初めとする王室を批判的に論じることは「不敬罪」の罪に問われ、厳罰処分を受ける可能性も出てくる。このため、ラーマ9世が推進してきた開発事業はあまり学術的な研究対象とされてこず、その内実は、ブラックボックスとなっている。本研究では、ラーマ9世が最も中核的な開発事業として取り組んできた「水力・灌漑開発」を対象として、タイにおける水資源開発の発展の歴史的推移、開発推進のため流布されてきた言説、水利用の実効性、関連するステークホールダーの諸認識などを明らかにする。